東京高等裁判所 昭和32年(ラ)506号 決定
抗告人は、原決定は相手方の登録第二〇九、七八八号の特許権の権利範囲を不当に拡張して解釈した結果、抗告人製作の腕時計用バンドが該特許権の範囲に包含される、としたことを不服として、本件抗告に及んだものであるところ、成立に争のない甲第一号証の本件仮処分決定をみるのに、仮処分の目的として、登録第二〇九、七八八号の特許にかかるリンクバンド又はこれに類似する伸延可能なリンクバンドと表示してあることが明らかであるところ、成立に争のない同第二、三号証(仮処分調書)、同第四号証、第五号証の一、二、乙第一、二号証、第八号証(各鑑定書)、乙第三号証(菅沼義方作成にかかる山田製作所製バンドの説明と題する書面)と成立に争のない乙第五号証(東京地方裁判所昭和三〇年(モ)第五、七一八号特許模造品仮処分異議事件の判決)を対照考察するのに、本件仮処分の執行を受けた抗告人会社の製品は、右仮処分決定において、一応相手方の前記特許のバンドの類似品として仮処分の対象とされたものであることを認めることができる。ところで、執行方法に関する異議は、執行機関の執行行為およびこれに附随する行為に形式的、手続的な瑕疵のあることを理由として申し立てられるものであつて、債務名義の内容的な違法、不当については、これによつてその是正を求め得べき限りではない。したがつて、本件において抗告人の製品が相手方の特許権を侵害するかどうかは、これをもつて相手方の特許製品の類似品として、仮処分の対象に包含させた前記仮処分決定の内容の当、不当の問題であつて、もつぱら右仮処分に対する異議等仮処分決定に対する不服手続において論ぜらるべく、執行方法に関する異議の理由にはならないといわなくてはならない。本件仮処分執行については、何ら形式的、手続的な点に瑕疵のあることを認めることができない。本件執行方法に関する異議を失当として棄却した原決定は結局相当であることを失わないから、本件抗告もその理由がない。
〔編註〕 本件における抗告の趣旨および理由は左のとおりである。
(1) 抗告の趣旨
原決定を取消す。
相手方が東京地方裁判所昭和三十年(ヨ)第一八三五号仮処分命令正本に基き、抗告人に対する強制執行として、東京都足立区五反野南町一四一二番地抗告人方において、昭和三十一年十二月二十六日東京地方裁判所執行吏佐藤卯始夫代理菅原康久に委任して別紙目録(一)記載の物件につき、竝に昭和三十二年一月二十八日同裁判所執行吏浅見謙次郎に委任して別紙目録(二)記載の物件につきなした各強制執行はこれを許さない。
旨の御裁判を求める。
(2) 抗告の理由
原決定は東京地方裁判所昭和三〇年(ヨ)第一八三五号仮処分命令の基礎となつた特許第二〇九七八八号の特許権をその明細書竝に特許請求範囲の明白な記載にも不拘、不当に拡張して解釈した結果抗告人の製作にかかる腕時計用バンドが該特許権の範囲に包含されるとして抗告人の申立を容れなかつたものであるが、抗告人の製作にかかる腕時計用バンドは該特許権とは全くその思想を異にする別箇のものであり、抗告人の吾国のみならず他の諸国に於いても別箇の原理に基くものとして独立の特許権又は実用新案権を与えられているものである。